さっぽろ・たべるとくらしの研究所とつくる 「ひなたの粒 米粉パンケーキミックス」レポート
2016.02.18

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みなさんこんにちは。
昨年2015年の12月24日よりスタートした「おこめやま応援金プロジェクト」。遠くからも近くからもたくさんのお申し込みをありがとうございます!応援金プロジェクトチーム北国班drop aroundです。

さて本日は、私たちが住む札幌でカフェ・ギャラリーとして営業しながら、美味しい加工品を製造販売、お店ではライブや展示も頻繁に行う人気店「たべるとくらしの研究所」にやってきました(リポーター風)!

たべるとくらしの研究所ってどんな場所?なんの店?

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研究所と名乗るこのお店は、福島で4代続く果樹農家・あんざい果樹園の安斎伸也さんと、果樹園の一角でcafe in CAVEを営んでいた奥様の安斎明子さんが、2011年の震災を機に札幌へと移住し、あらたに立ち上げた場。ご紹介の際にも人気のカフェ、ではなくあえて「場」と呼びたいのは、カフェで提供されるごはんやデザート、お手製のジャムや調味料がとびきり美味しいだけではなく、わたしたちの暮らしに必要なアイディアと愉しさが詰まっていて、その名のとおり「たべること、くらすこと」を今現在の自分たちの頭で考え、つくっていく時の道しるべとなってくれそうな場、未来を感じる場だからです。

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このおこめやま応援金プロジェクトを立ち上げるにあたり、皆さんのお気持ちと募金へのお返しとして、お米にまつわるプロダクトをつくってお届けしたい、そう考えていた時、1番に思いついたのが「たべるとくらしの研究所」さんとやまざき家のお米「ひなたの粒」の米粉をつかった美味しい加工品をつくれないだろうか、ということでした。

研究所の副理事長である安斎明子さんと、明子さんと一緒にカフェを切り盛りする土居美和子さんにお願いをすると、その日のうちに快諾のお返事を頂きました。
「うち(たべ研)でいいんですか?やまざきさんの周り、凄い料理家さん沢山いるのに~」
「たべ研に、明子さんにどうしてもお願いしたいんです。ひなたの粒を託していいですか」
「じゃあ早速、試作をはじめたいので、玄米粉を送ってもらうことはできる?」
そんなやりとりから、「ひなたの粒×たべるとくらしの研究所」米粉パンケーキミックスの試作とレシピ開発がはじまりました。

「ひなたの粒」の澄んだ味をそのままに。超シンプルな引算的パンケーキミックスの完成

明子さんは実際に「研究員」と呼ぶにふさわしい、ものすごい研究家いえ、探検家みたいなひと。食材のお題をもらったら、それこそいろんな角度から検証&研究、どう切るか、混ぜるか、火を入れるか、どのタイミングで加工を止めるか。何度も試して体で覚えて、すかさず周りの反応を聞いて、かたちにする。子どもたちにつくる日々のお弁当すらも「どんどん研究対象みたいになっている」とのこと。だからこの人の手からは美味しいものが次々と出てくるんだなあ、と納得します。

さて、そんな明子さんの元に、やまざき家から「ひなたの粒」の玄米粉が届きました。早速試作をスタートすべく、玄米粉を試食してみて、「ひなたの粒」の米粉の持つ澄んだ味わいに、明子さんは驚いたといいます。
そして、「お米の、粉の味がとてもクリアだから、余計なものはいらないな、って。どんどん引き算のレシピになっていきました」と「ひなたの粒」の玄米粉の印象とこのミックスのレシピの特徴を話してくれました。

まずは、米粉についてのおさらい。米粉はその名のとおり、お米を細かく粉砕した粉で、中でも玄米粉は、お米の全粒粉のことを言います。栄養も食物繊維も豊富な分、お米の精米状態としては籾から殻を剥いただけなので、一番消化にも時間がかかる玄米。それを細かな粉状に粉砕することで、消化吸収しやすくなります。また、成分をそのまま、まるごと安心して食べられるのは、無農薬で育てられた「ひなたの粒」ならでは!アレルギーも出にくく、上手に使えば料理にもお菓子にも万能な玄米粉を、どう美味しく活かすかが今回の腕の見せ所。ひなたの粒の玄米粉、さらに粗挽き細引きの2種を食べ比べてみて、おこめやま家にも相談や質問を重ねながら、「小麦粉のパンケーキに負けない」「むしろ小麦粉の上を行く」レシピを目指すことにしたそうです。

試食と取材を兼ねて、年末のたべるとくらしの研究所にお邪魔した際には、「レシピは超シンプル。混ぜる順序と水分量がポイントかな」とカフェの厨房で、ミックスと指定の材料(卵、豆乳)と混ぜ合わせるところから実演してくれました。パンケーキミックスのパッケージの裏面に美味しくつくるコツとレシピをおつけする予定ですが、ひなたの粒玄米粉パンケーキミックスは、1ボウルでつくれる米粉ミックスです。材料を入れる順序さえ間違えなければ、簡単に美味しいしっとりパンケーキが出来る嬉しいレシピ!米粉でつくるパンケーキの良さは粉がタネの中に均一に混ざりやすく、しっとり焼き上がること。

ごはんと味噌汁のような、お米ならではのパンケーキ

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「小麦粉のパンケーキだと混ぜすぎたりするとグルテンの働きで、1枚目を焼く時と最後に焼く時でタネ生地が違う状態になりやすいから混ぜ方、焼き方にコツがいるんだけれど、この米粉は細引きで製粉してくれているから、混ぜても均一になりやすいのがいい。混ぜやすいから、子どもと一緒に混ぜるとこからつくれるのもいいよね。日曜日とかにさ」

パンケーキを焼いている最中にも、ちょこちょこと「いや、でもこれはこういう風にしてもいいかもー。うーん、誰でも美味しく焼けるのはこっちだと思うんだよなあ」となにやら頭の中のメモに追加するように、何度か試し焼きする明子さん。今回のレシピで苦戦したのは「米粉のザラザラ感」。口の中でざらつきを感じない配合にすることに気を遣ったそう。

「やっぱり元がお米だから、ごはんとみそ汁の組み合わせに近い、豆乳で作るのがしっくり来ると思う」
「それも混ぜ物がない無調整豆乳が、この米粉にはピッタリ」
「パンケーキというよりは、どらやきって感じ?甘すぎず、ごはんみたいに食べられるのがいいよねー」

と手早く、鉄のフライパンの上の生地をひっくり返します。このパンケーキミックスを手にしたみなさんにぜひ試して欲しいのは「蓋をして、蒸し焼きにして焼く」こと。そしてできれば、鉄のフライパンで焼いてもらうのがおすすめだそうです。
そして「このレシピは限りなく引き算でつくった”基本形”なので、ぜひ自分好みに調節して仕上げてほしい」とのこと。
実は相談を重ね、最後の最後でこの玄米粉ミックスの内容量は50gアップ!しました。それも明子さんによる「ミックスって、家でつくって楽しむものなので、簡単かつ最終型はそれぞれの人の好みで調節できるように、遊べる余地を残した足せるレシピに。たっぷり容量だから何回か楽しんで!」というサービス精神から。

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さて、こうして出来上がったパンケーキは、ご覧のとおり、ほかほかもっちり。明子さんが言ったとおり、上等などらやきのような素朴で飽きのこない味。実は油やバターも入れません。この取材の日は、寒い寒い日でしたが「ひなたの粒パンケーキ」は冷めても美味しかった!ごくシンプルなレシピと材料でつくる、ド直球な美味しさの米粉パンケーキ、ぜひたくさんの方に食べて、そして自由にアレンジして楽しんで頂きたいです。

■お申し込みはこちらからどうぞ → 応援金プランページへ

 

「田んぼに立ってないと、お米つくってないとヒロシじゃないんだよね」

美味しいパンケーキを一足先に試食させてもらった後は、今のやまざき家に何を感じるか、を併せて伺ってきました。

そもそも、何故drop aroundがたべるとくらしの研究所にレシピを依頼したのか。明子さんにこのパンケーキミックスのレシピ開発をお願いした理由は間違いなく美味しいパンケーキミックスが出来るはず!という信頼に加えて、「土の上に立っていないと駄目」「田んぼにいないと駄目」な夫を、それぞれつくる、つたえる力で支えて、しっかりと前を向く明子さんと(山﨑)瑞弥さんに重なるものを感じたから。どんな困難な場に追い込まれても、今やるべきことを見つけて仲間と「場」と美味しいものを届けていく彼女たちの力強さと信頼できる技も、このパンケーキミックスから伝わっていったら嬉しいな、と思ったのです。

全く友人も親族もいない福島へ、果樹農家の夫の元へ嫁ぎ、果樹園で育てたとびきり美味しいくだものをひとつも無駄にしないで使い切れるように、全く経験のないところから、ジャムやデザートを作るようになったこと。そのジャムやデザートを提供する場として果樹園の一角に家族でカフェをこしらえて、お客さんの幅や提供できることも、すこしずつ広げていって、イメージもムードも違うあたらしい果樹園のありかたを模索していったあんざい家。そしてその道筋の途中で、未曾有の出来事であった震災があり、果樹園を継ぐつもりでいた夫とともに福島を離れざるを得なかった。それは心をざっくりと切り刻まれるような、コツコツ育てて来た場を奪われる酷な体験だったはずです。
それでもなお、あらたに北国へと移り住み「たべるとくらしの研究所」という場をつくり、自分たちの力で立ち上がろうと奮闘し続けて来た。自らまた耕し、自然栽培で育てた貴重な作物を、余すこと無く食べきる使い切ろうとする姿も、終わりの無い毎日続くことににこつこつ取り組んでいる姿も、ほら、やまざき家が今、家族総出で次の田植えに向かって必死にはたらく姿と重なると思いませんか??

明子さんは厨房のそばでギターをひいている伸也さんを見つつ(←冬なので農作業がない理事長)、「いやー、鬼怒川の水害の話聞いた時は(自分たちの経験)と、だぶった」とぽつりと言葉を落としました。
「原発がああなって、福島に戻って今までと同じように作り続けることできないでしょ、と思ったけれど、それって(アイデンティティを)奪われることなんだよね、、その人がその人でいられなくなるっていう。一番辛かったのは、避難している最中、いつもなら朝起きて果樹園出て、土の上に立って、ってやってる父ちゃんが、なにもすることがなくて、やりたいことひとつもできなくて、ぼうっとしてて、、でも帰れないしね。それ見るのが辛かったなあ。。そのぼうっとしてるのを見ないふりしなきゃいけないのも苦しかった」
「だから、ヒロシも田んぼに立ってないと、お米つくってないとヒロシじゃないんだよね。それをなんとか(田んぼに)立たせようとする母ちゃん(瑞弥さん)の気持ちも痛いほどわかるんだ~」

「顔が見えている人たちからの応援や支援は、ずっと残る」

あの時のことを思い出すだけでうっかり泣きそう、、と(伸也さんに聴こえないように)言いながらも、しかしきっぱりと明子さんは言いました。
「これだけ美味しいお米は、宝。絶対守らないとね。みんな守りたいと思ってくれてるから絶対大丈夫」
人に支えてもらうと心が強くなる。顔が見えている人たちからの応援や支援は、ずっと残る。
「あとね、たくさんの人に助けてもらったら、弱音吐けなくなるっていうのもあるよ。ここで下向いていられない、助けてくれた人たちみんなが見てるからなんとか生きなきゃって思うよ。こんなに愛されてて、助けてもらったら、もう絶対悪いことできないって思うさ!きっと」と笑いました。

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いま、農家として困難な場に立たされたやまざき家を支えようと全国から手を差し伸べてくださる方々がたくさんいて、そうしてこの応援金プロジェクトも成り立っています。まさに人の力を感じ続ける日々です。どんどん支援の和が広がっていることに感謝しつつ、一方で震災や津波、今回のような水害で、わたしのあなたの大事な仲間がどれだけの苦痛や負担を乗り越えて、いまここで暮らしているのだろう、という果てのない気持ちにもなります。彼らの作ったおいしいお米や、くだものや野菜をすぐそばで食べることができるのって、ほんとうに、奇跡みたいなことなんじゃないだろうか?
それを思うにつけ「ひなたの粒 米粉パンケーキミックス」は単なる米粉パンケーキミックスじゃないぞ!そう思います。人の力で救い出されたお米が材料、そして人の力に励まされて立ち上がった人による美味しさで出来てます。なんかもう、ご利益ありそうレベルに感謝が湧いてくるパンケーキミックス。「今まで応援される側だったと思ってたら、気づいたら応援する側にまわってて感慨深い」というのは、明子さんによる後日談。人の力は、人の力を呼ぶ。助ける人も、助けられている人も、食べるわたしたちも実は毎日、毎食、励まされてるのかもしれませんね。
 
 

■ひなたの粒・米粉パンケーキミックスを開発してくれたのはこちら

たべるとくらしの研究所
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〒064-0809
札幌市中央区南9条西11丁目3-12
Tel:011-522-8235
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2月3日節分より、新年の営業もはじまりました。
札幌のみなさん、北海道を旅する皆さんはぜひたべるとくらしの研究所へどうぞ。

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